4月になれば彼女は

バーズでの2年間を終えました。本当にあっという間でした。高校の放送部顧問として、NHK杯(通称Nコン)を目指す生徒と一緒にアナウンス・朗読の特訓を始めて7年目、自分でも表現してみたい欲求を抑えられなくなって探し出したのが、スクールバーズでした。当時は遠距離に抗えず入学を断念しましたが、リモート受講が可能になり念願のレッスンを受けられた時はたまらなく嬉しかったです。バーズで学び始めて以来、「Nコン読み」しか知らなかった私の凝り固まった音声表現の世界が一気に広がっていきました。自由になれた2年間でした。

バーズを知る前は、Nコン読み(=フラットストレートの基本のキであると今は解釈しています)が唯一絶対の正解だと信じ、そこから外れないように表現することが美徳であるかのように部員に話すこともありました。ところが、放送部から声優養成学校や大学の放送学科に進んだ部員たちの中に、「放送部出身者は綺麗に読もうとしすぎて表現が足りない」と言われる、と口にする卒業生がいました。その時、彼らの表現の幅を狭めてしまっていたことに気づいて責任を感じ、心底申し訳ない気持ちになりました。しかし、バーズで多種多様な表現を知った今では、フラットストレートを確固たる土台としつつ、作品の種類や構成に応じて、その瞬間瞬間に色を添える最適な表現を生徒と一緒に模索できるようになりました。それができるようになったのは、一人一人が持っている表現の可能性を決して否定せず、的確に修正を図り、声質や強みをどれだけ生かせるかを全力で考えていく姿勢を、バーズの先生方から教わったからです。私はラッキーでした。表現する側としての学びだけでなく、生徒と関わる際にどうあるべきか、つまり(烏滸がましいですが)指導する側としての姿勢も大いに勉強させていただけたのですから。

・・・とここまでくると、「じゃあこれからも学校現場で頑張ってください」と言われそうですが、違うんです! この2年間で、私はナレーターになりたいという気持ちを強めました。コア・モードのレッスンを通してナレーターという仕事の輪郭が色濃くなり、奥深さを味わう毎日。2年前の平坦な読みからは考えられないくらい、恐れずに表現できるようになりました。こんな読みはダメじゃないか、こんな表現は恥ずかしくてできない・・・なんて殻に閉じこもることはなくなり、笑われても首を傾げられてもいいからやってみよう!と思えるようになりました。その結果、あるナレーションを読んだ時に堀場先生から「10人中2人は良いって言ってくれる表現」と言っていただけたのが実はめちゃくちゃ嬉しかったのです。これは私にとって大きな成長でした。藤本先生の最後のレッスンでは、ずっと(たぶん今も)課題になっている「力み」がとれてきたという言葉もいただくことができました。藤本先生は、原稿を読むたびに「今の課題は何?」「あなたの強みは何?」「誰のコピーをやっているの?」と一人一人に問いかけていらっしゃったのが印象的でした。バーズのレッスンでこうして今の自分に何ができて何ができていないのかを直視し、心に刺さる表現を模索できた日々の尊さよ・・・! 卒業すると、広大な荒野にひとりぼっちで足を踏み入れるような気持ちですが、ブランディングクラスで学んだメンタリティを携え、この藤本先生の問いかけを思い出し、いつも自問自答していきます。

4期目は、成長を褒めていただくことが増えてすごく嬉しかったです。楽しく続けられる練習の場があり、その成果を聞いてくださる存在がいて、具体的なアドバイスがあり、現役ナレーターでもある先生方の見本を目の前で聞いて学べるチャンスがあり・・・そんな至れり尽くせりなバーズでの2年間が終わってしまうなんて、信じがたい。でも、なんともう終わってしまいました。それはつまり、自分の中の成長を確かめるだけで喜べた時間も終わりということです。ナレーターを目指し、いろんなものとの戦いが始まるような気がしています。「怖いんじゃない。これは武者震いだ!」と信じて、卒業の集大成として先日収録したボイスサンプルを手に、やれることを精一杯続けていこうと思います。

先生方、マネージャーの方々、そして学長、2年間、最高のレッスンの数々をありがとうございました! 明日から入学する皆さんも受講中の皆さんも、どうか濃密なバーズライフをお過ごしください。心からの感謝を込めて。

3月からはみ出してすみません。長文失礼しました。読んでくださりありがとうございます!